碓井真史

人はだれでも少しは人とは違います。でも、大きすぎる違いがあれば、それは異常でしょうか。病気でしょうか。たとえば虫歯がない人。両目とも視力1.5以上の人。異常とは言いませんよね。たとえば100メートルを10秒で走れる人。数の上で言えば、こんな異常なことはめったにありません。でも、だからといって、病気だから病院へ行って足を遅くしてもらってきなさいなどとは言いません。普通とは違い、数が少なくても、それだけでは異常ではありません。 虫歯がないこと、視力がいいこと、速く走れること、それには価値がある、良いことだと、私達は考えます。どんなに数が少なくて、めったにない事でも、価値があるとみんなが思えば、それは異常とは言われません。かえって、数が少なくなるほど、価値が上がるでしょう。 では、人とは違う変な格好をするのは異常でしょうか。そのことに価値はありませんが、人々がそれくらいはいいかなと思ってくれれば、異常とは呼ばれません。正常か異常かの区切りは、時代や社会によって変わるということです。 数が少ない、価値が無い、社会に認められないというのが異常になりますけれども、実際には、困っているかどうか、社会生活ができるかどうかも大きなポイントです。 普通に生活できているのであれば、病院で治療が必要だとはあまり考えませんし、個性ということもできるでしょう。 芸術家や大金持ちの中には、かなり変わった人もいるのですが、普通の人なら社会生活ができなくても、彼らはそれで上手くいっているのなら、それでよいのかもしれません。もし彼らがもっと常識的な人であったなら、芸術家や大金持ちにはなれなかったかもしれませんから。